今回ピックアップするテーマは「全固体電池」関連
EV(電気自動車)やIoT関連の需要が高まる中、次世代の二次電池として注目が集まるのが全固体電池。
関連銘柄の注目度はというと、期待感が先行して大きく上昇していたことから2018年は大暴落となっています。
しかし、投資家の関心が最も高いテーマの一つであることから2019年には大反発が期待されます。
そんな全固体電池関連銘柄について、過去の動向と2019年の注目ポイントを見ていきます。
目次
1.全固体電池の過去
2018年以前の全固体電池関連銘柄の動向を振り返っておきましょう。
1-1.2018年以前の全固体電池の動向
スマホやデジカメなど身の回りの数多くの電気機器に搭載されているリチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、電解液などから構成されています。
リチウムイオン電池は性能や用途によって使われる材料が異なりますが、正極にリチウム遷移金属複合酸化物、負極に黒鉛などの炭素材料、電解質に有機溶媒とリチウム塩が使われることが多くなっています。
今回注目する全固体電池は、その名の通り、全ての部材を固体の材料で構成する電池のことです。
全固体電池とリチウムイオン電池の最大の違いは、全固体電池では電解液を使用しない点にあります。また、全固体電池では、正極と負極の接触を防ぐセパレータも不要になります。
既存のリチウムイオン電池と比べた全固体電池のメリットとしては、発火リスクのある電解液を使わないため安全性が高いことや作動温度範囲が広いこと、劣化しにくいことなどが挙げられます。
特に、安全性の高さから全固体電池は大きな注目を集めており、EV(電気自動車)や家庭用蓄電池など大型電池が求められる領域において商用化が求められています。
トヨタ自動車は全固体電池の研究に力を入れていることで知られており、特許件数では2位以下を大きく引き離している全固体電池の世界的リーディングカンパニーとなっています。
1-2.過去に急騰した全固体電池関連銘柄
マーケットにおいても、全固体電池は大きな注目を集めています。
光学ガラスのトップメーカーとして知られる【5218】オハラは、全固体電池関連銘柄として大きく買われた銘柄です。
同社は2017年10月に、既存のリチウムイオン電池の性能向上に効果が見込める、ガラスセラミック素材を使った添加剤を開発するなど、全固体電池に関連する研究を進めていることで知られます。同社の株価は、2012年末から2013年5月に掛けてのアベノミクス相場でも上がらず、2016年までは長らく500円前後で停滞していました。
しかし、全固体電池が注目を集めるとともに上昇し、2016年6月に一時481円まで下がった株価は、2018年1月には4,330円まで上昇。
アベノミクス相場でも上がらなかった“終わっていた銘柄”が、全固体電池への期待から大きく買われるようになり、1年半で9倍以上の暴騰となりました。
ただ、この1年半に大きく上げ過ぎた反動から2018年には大きく値を下げており、2019年1月には1,600円前後まで大きく値を下げています。
★注目ポイント1 |
全固体電池は、全ての部材が固体の材料で構成された銘柄。電解液を使わず安全性が高いことから、EVや家庭用蓄電池などの分野で商用化が期待されている。 |
2.全固体電池の2018年を振り返る
2018年の全固体電池関連ニュースを抑えておきましょう。
2-1.2018年の全固体電池の動向
2018年には、特にこれといった全固体電池関連ニュースは出ませんでした。
マーケットにおいても、大きく買われた全固体電池関連銘柄は見当たりません。むしろ、2018年はマーケット全体でハイテク銘柄が軒並み売られたことから大きな下げが目立っています。
とはいえ、「全固体電池」は多くの株式情報サイトで注目度ナンバーワンのテーマになっていることが多く、投資家の関心が高いことに違いありません。
リチウムイオン電池の領域では、国家戦略でEVシフトを進める中国が攻勢を強めており、車載用リチウムイオン電池で長らく世界トップを走っていたパナソニックが、中国のCATLに世界シェアトップの座を譲り渡しています。
一方、全固体電池では日本企業の特許件数が世界で圧倒的であり、全固体電池のリーディングカンパニーであるトヨタ自動車は2020年前半での商用化に向けて着々と研究開発を進めています。
2-2.全固体電池に力を入れている企業をピックアップ!
全固体電池に力を入れている企業を見ていきましょう。
世界的自動車メーカーの【7203】トヨタ自動車は全固体電池のリーディングカンパニーであり、トヨタの動向が全固体電池の未来を左右することになると言っても過言ではありません。全固体電池に関するトヨタの動向は必ずチェックしておきましょう。
化学メーカーの【4275】カーリットホールディングスは固体電解質の研究に力を入れており、全固体電池関連銘柄として物色されることが多くなっています。
富士通系電池メーカーの【6955】FDKは、2018年2月末に開催された「国際二次電池展」で、富士通研究所と共同開発した新型の正極材料を使った全固体電池を公開しています。
全固体電池の量産化を目指す【6762】TDKや、全固体電池の大型化を進める【6981】村田製作所といった日本を代表する材料メーカーにも注目が集まります。
また、2016年から2017年に掛けて全固体電池関連銘柄として暴騰した【5218】オハラにも、依然大きな注目が集まります。
★注目ポイント2 |
2018年には全固体電池に関する目立ったニュースは特になく、マーケットでも注目されることはなかった。しかし、多くの株式情報サイトでは「全固体電池」は最も検索されているテーマになっている。 |
3.全固体電池の今後
2019年の全固体電池の注目ポイントを抑えておきましょう。
3-1.2019年の全固体電池関連銘柄注目ポイント!
全固体電池の開発で世界をリードするトヨタ自動車は、世界に先駆けて2020年代前半での全固体電池の商用化を目標としており、全固体電池の本格的な普及は2030年代になると言われています。
2019年にも、トヨタ自動車の全固体電池に関するニュースには要注目です。
全固体電池に関連するテーマとしては、やはりEV関連は切っても切り離せない関係にあります。EV関連で大きなニュースがあれば、全固体電池関連銘柄が物色されることも考えられます。
テクニカル的に見ると、2018年には全固体電池関連銘柄は大暴落しています。
2018年1月始まりから12月終わりまでの下落率を見ると、【5218】オハラは-53.57%、【4275】カーリットホールディングスは-43.77%、【6955】FDKは-57.44%となっています。
関連銘柄がこれだけ大暴落していると、2019年には大きく反発してもおかしくありません。
特に【6955】FDKは、2019年1月9日付の日経新聞で、チップ型全固体電池のサンプルを出荷したと報じられたことから注目が集まります。
3-2.注目の全固体電池銘柄
今後も注目しておきたい全固体電池関連銘柄を、数銘柄ピックアップしました。
銘柄 | 株価 | 主なサービス |
【4275】カーリットホールディングス | 812円 | 電気系化学メーカー。固体電解質の研究に強み。 |
【5218】オハラ | 1,624円 | 光学ガラスのトップメーカー。リチウムイオン電池の性能向上が見込める添加剤。 |
【6762】TDK | 8,560円 | 電子部品メーカー大手。全固体電池の量産化に取り組む。 |
【6955】FDK | 1,029円 | 富士通系電池メーカー。新型正極材料を使った全固体電池、チップ型全固体電池。 |
【7203】トヨタ自動車 | 6,655円 | 世界的自動車メーカー。全固体電池の特許数世界トップ。 |
※株価は2019年2月1日終値で算出
★注目ポイント3 |
全固体電池関連銘柄は2018年に大暴落となったことから、2019年には巻き返しの大反発が期待される。2019年にも、トヨタとEVの動向には依然注目が集まる。 |
4.まとめ
全固体電池関連銘柄は期待感が先行して上昇していたこともあり、2018年には関連銘柄は軒並み大暴落となってしまいました。
しかし、多くの主要株式情報サイトで「全固体電池」は注目度ナンバーワンのテーマになっていることから、投資家の注目は依然高いことがうかがえます。
2018年に大暴落となった反動で、2019年には全固体電池関連銘柄が大暴騰してもおかしくありません。
トヨタ自動車の全固体電池に関する動向やEVに関するニュースにはアンテナを張っておき、全固体電池関連銘柄の動向をチェックしておきましょう。