ただ、近年は再生医療や手術シミュレーションに向けた医療用3Dプリンターが急成長することが期待されており、再び注目を集める可能性も出て来ました。
そこで今回は3Dプリンター関連にスポットを当て、関連銘柄の動きから、注目銘柄まで見ていきます。
特に医療用3Dプリンターには注目です。
1.3Dプリンター関連銘柄に期待

製造業を中心に3Dプリンターが徐々に活用されるようになってきています。
1-1.3Dプリンターとは?
今回は、製造業を中心に普及が進みつつある3Dプリンターに関連した銘柄に注目していきます。
日本語では「立体印刷機」とも呼ばれます。
従来のプリンターは紙などの平面上にインクを出して文字や印刷をするものですが、3Dプリンターは空間上に樹脂などの材料を何層にも積み重ねて立体物を造形していきます。
3Dプリンターの印刷方式としては、粉末焼結積層造形方式、光造形方式、インクジェット方式、シート積層法、熱溶解積層方式の5つが主流であり、それぞれ用途や必要とする材料が異なります。
3Dプリンターは、製造業を中心に、建築・医療・教育など幅広い分野で活用されています。
製造業では製品試作やモックアップ(模型)の制作など、建築ではコンペに使われる建築模型の作成、医療では臓器や骨などの医療用モデルの作成、教育では教育ツールとして使われています。
また、個人用の3Dプリンターも徐々に普及しており、フィギュアやスマホカバーを作るなどの用途で使われることも増えています。
3Dプリンターが本格的に普及してくると、3次元データをネット上で共有して3Dプリンターで造形することによって、インターネットを通じて間接的に物理的なモノのやり取りができるようになると期待されます。
1-2.3Dプリンターの市場規模は?
3Dプリンターの可能性を紹介した「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」がベストセラーとなった2012年から2013年頃には大きな期待が集まっていましたが、近年は苦戦を強いられています。
3Dプリンティング市場は、3Dプリンター本体、3Dプリンティングサービス、造形材料の3つの市場で形成されています。今回注目する3Dプリンター関連銘柄も、このいずれかを手掛ける企業で構成されます。
2016年は、3Dプリンター本体の売上額は前年比-19.0%の115億円となったものの、3Dプリンティングサービスは+7.4%の100億円、造形材料は+9.4%の57億円となっています。
3Dプリンターの用途を産業別に見ると、製造業が市場全体の76.8%と過半数を占めています。続いて医療が3.7%、教育が2.3%となっており、製造業での用途が圧倒的であることが分かります。
国内3Dプリンティング市場は、2021年までに年平均10.6%で成長し、2021年には450億円規模にまで成長すると予測されています。
特に、今後は医療・教育分野での成長が期待されており、医療用3Dプリンティング市場は2021年までに年平均+18.5%の高い成長をするものと期待されています。
再生医療への活用や手術のシミュレーションのための臓器モデルの造形など、医療・福祉業界からの3Dプリンターへの需要は高く、今後広く活用されることが期待されます。
★注目ポイント1 |
3Dプリンターとは、3次元データを元に3次元のオブジェクトを造形する装置のこと。製造業を中心に普及しており、今後は医療用3Dプリンター市場の拡大が期待される。 |
2.3Dプリンター関連銘柄の推移

2-1.3DCADに強いアンドール
同社は、3DCAD関連製品を多数出している他、3Dプリンターの製造を手掛けていることでも知られます。

同社の株価は、2017年9月には385円の安値を付けており、やや横ばいが続いてから上昇していき、2018年1月には791円まで上昇しました。
この1年で最大約2倍の上昇となりましたが、その後は下落しており、2018年7月現在は580円前後で推移しています。
3Dプリンター関連銘柄の筆頭である同社はこの1年で大きく上昇しました。
この1年で大きく反発したとはいえ、それでも全盛期の半値までかろうじして戻したに過ぎず、それすらも維持できずに下落しています。
3Dプリンター関連銘柄は、アベノミクス相場とも重なった2013年頃には多くの投資家から注目されるテーマ株となっていた時期もありましたが、近年は苦戦しているのが現状です。
2-2.3Dプリンター出力サービスを手掛けるJMC
3Dプリンターや砂型鋳造による試作品の製造などを手掛ける【5704】JMCは、停滞が続く3Dプリンター関連銘柄の中でも希望の星です。
同社は、3Dプリンター出力サービスを手掛けており、特に医療分野に力を入れていることで知られています。
同社は、2016年11月に新規上場(IPO)したばかりの新興銘柄で、3Dプリンター関連の新興株ということでも注目を集めます。

同社の株価は、2017年7月初めには1,800円を付けてましたが、値を大きく下げていき、2017年12月には980円まで下落。その後は大きく値を戻しており、2018年7月には2,429円の高値を付けました。
この1年で見ると2.5倍の上昇となっていますが、大きく下げていたのも事実です。
3Dプリンター関連銘柄は、この1年で一部の銘柄が上昇してはいますが、数年単位の値動きで見ると高値を超えられず苦しい値動きになっていると言わざるを得ません。
★注目ポイント2 |
3Dプリンター関連銘柄は、この1年で一部の銘柄が上昇した。しかし、テーマ株全体で見ると苦しい値動きになっていると言わざるを得ない。 |
3.主要3Dプリンター関連銘柄チェックリスト

3Dプリンター関連銘柄より厳選した注目株をチェックしておきましょう。
銘柄 | 株価 | 主なサービス |
【3401】帝人 | 2,029円 | 子会社の帝人ナカシマメディカルが医療用3Dプリンティング |
【4185】JSR | 1,942円 | 医療用3Dプリンティング |
【4229】群栄化学工業 | 3,390円 | 3Dプリンター材料 |
【4240】クラスターテクノロジー(低位株★) | 474円 | バイオ3Dプリンター |
【4640】アンドール | 564円 | 3次元CAD・CAM |
【5704】JMC | 2,258円 | 3Dプリンティングサービス |
【6339】新東工業 | 986円 | フランスのセラミックス3Dプリンターメーカー「3Dセラム」を買収 |
【6340】澁谷工業 | 3,440円 | バイオ3Dプリンター |
【6633】C&Gシステムズ | 511円 | 金型用CAD・CAM |
【6638】ミマキエンジニアリング | 856円 | 3Dプリンター事業 |
【6789】ローランド ディー.ジー. | 2,362円 | 3Dプリンターの製造 |
【6894】パルステック工業 | 1,729円 | 非接触3次元測定装置 |
【6947】図研 | 1,642円 | プリント基板用CAD・CAMシステム |
【7741】HOYA | 6,349円 | 子会社のHOYA Technosurgicalが医療用3Dプリンティング |
【8060】キヤノンマーケティングジャパン | 2,205円 | 3Dプリンティングサービス |
※株価は2018年7月13日終値で算出
★注目ポイント3 |
3Dプリンター関連銘柄を抽出してみると、3Dプリンターの製造、3Dプリンティングサービス、3Dプリンタ用材料のいずれかの事業に関連した銘柄に分かれる。医療用関連を手掛けている銘柄は特に注目したい。 |
4.3Dプリンター関連銘柄の上昇率ランキングTOP3!

過去1年間の安値から高値までを算出し、最も上昇率の高かった3Dプリンター関連より上位3銘柄を発表致します。
※2017年7月13日~2018年7月13日の1年で算出
4-1.第1位【6433】ヒーハイスト精工
上昇率 | 3.8倍(安値:255円 → 高値:989円) |
市場 | ジャスダック |
RSI | 48.23(売り買い均衡) |
4-2.第2位【6973】協栄産業
上昇率 | 2.56倍(安値:1,900円 → 高値:4,880円) |
市場 | 東証一部 |
RSI | 28.34(売られ過ぎ) |
4-3.第3位【6951】日本電子
上昇率 | 2.54倍(安値:488円 → 高値:1,240円) |
市場 | 東証一部 |
RSI | 55.16(売り買い均衡) |
※RSIは2018年7月13日終値より算出
★注目ポイント4 |
3Dプリンター関連銘柄全体で見ると、ベアリングが主力のヒーハイスト精工が上位に。今後は医療用3Dプリンター関連銘柄が上位に上がってくるのか注目していきたい。 |
5.まとめ
3Dプリンターは、「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」がベストセラーとなっていた2013年頃には社会的にも大きな注目を集めており、関連銘柄も連日高騰が続いていました。
しかし、近年はほとんど話題にも上らなくなり、投資家からの関心も薄れています。この1年で一部の関連銘柄が上がってはいますが、テーマ株全体で見ると大きな熱があるとは言えません。
ただ、ここに来て再生医療を始めとした医療用3Dプリンターが注目を集めてきていることもあり、2013年頃のような勢いを取り戻すことに期待です。